働かないおじさんとイノベーション
「働かないおじさんとイノベーション」というタイトルで書籍を執筆中です。書籍と同じ構成ですが、内容は旬のブログ記事をリンクする形でお届けします。
なお、序文については原文を転載します。
序文
本書は「働かないおじさん」という明らかにネガティブな印象を持つこのテーマに向き合うことが求められる経営者、管理職そして有能な未来のリーダを対象として書かれている。また、見て見ぬ振りをするのではなく、本書を手に取り、この難題に解を求めてご苦労されている方々に対し、「働かないおじさん」は若手社員よりもずっと投資対効果の高い人財であること、加えて、新規ビジネス開発、特にソーシャルビジネス領域においては、イノベーションを起こす可能性が高い人財であるという視点を提供する。そして、「働かないおじさん」の具体的なリスキルプロセスを提示するとともに、「働かないおじさん」と向き合うことが、読者の皆さんそれぞれのビジネス領域において既成概念を打ち破り、新たな気づきと新規ビジネスにつながる「論理の飛躍」の機会となることを狙っている。
「働かないおじさん」と私
まずは、私が本書を執筆するに至った経緯について触れておこう。私は大学で情報科学を学び、大手IT企業に入社後は、がむしゃらに技術とプロジェクト管理を現場で学んだ。そして、30歳を迎える頃には大企業の看板を活用し、ジョイントベンチャーを立ち上げ、そこへ経営者として出向し不眠不休で働いた。グローバル化が急速に進み、その波に乗り遅れないように、また、そのうねりに飲み込まれないように、中国、東南アジアそして中南米へと活動の場を移していった。ベンチャー企業で働く仲間や成長著しい新興国の従業員の多くは、パッションに溢れ、夢を語り、そして自身の成長のための努力を惜しまなかった。その姿勢に大いに刺激を受けていたのだと、久しぶりに帰国したとき、改めて痛感することとなる。
帰国後は、大手企業の管理職として働くこととなり、そして、真っ先に衝撃を受けたのが、40代、50代の元気のなさである。能力とパッションを兼ね備えた人材がどこを探しても見当たらないのだ。能力の高い人は、無駄なことはせず、粛々と出世を狙っておりパッションが感じられない。また、パッションが前面に押し出されている人は、本や新聞をろくに読まず、教養の幅だしにも無関心で、まさにたたき上げという言葉がぴったりである。すなわち、ほんの一握りの人材が経営層に上り詰め、それ以外の、能力とパッションを備えた人材は、早々に転職か独立してしまうのである。そして、残った40代、50代の人たちこそ、「働かないおじさん」たちである。
海外ではほとんど見かけなかったこの種のビジネスパーソンを、本書では大きく2タイプに分類している。1つ目は能力があるにもかかわらず、手を抜いてやり過ごす、「働かないおじさん」。そして2つ目が、能力がないので、成果を出すことができない、「働けないおじさん」である。 このような人たちに囲まれる環境に身を置くこととなり、半年ほどは筆者もショックでパッションを失い、働かないおじさん化が進んだ。
しかし、国際系の学部で学ぶ娘の影響で、新たなライフワークとして取り入れた社会貢献の研究、特に、ファンドレーザーを目指す学びの中で知り合ったNPOの方々は輝いていており、心の支えとなってくれた。そして、彼らと接する中で、「働かないおじさん」問題は、日本独自の問題というよりは、終身雇用や大企業の仕組みの問題だと気がついた。
続きは近日公開
第1部 イノベーションと働かないおじさん
第1章 働かないおじさんとは
最近、「働かないおじさん」というワードで、企業に勤める成果の出ない40代、50台の男性社員について、ネガティブに語られるのをよく聞くようになりました。ひと昔は「窓際族」と呼ばれたり、若者たちの間では、最近「妖精さん」と呼ばれたりもするようです。いずれの呼び方も、彼らを疎ましく思うニュアンスがあり、社会悪として捉えています。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/05/09/lazyojisan01/
第2章 働かないおじさんの価値
新人はいかに優秀でやる気があっても、手取り足取り、社会人の基本から指導が必要ですし、そもそも、経験のないことはできません。一方で、「働かないおじさん」は、社会人としてはベテランなので、マナーなど教える必要はありませんし、そもそも仕事については、彼らはできるにも関わらず、故意に手を抜いているのです。すなわち、やる気にさせることさえできれば、相当な即戦力となりうるのです。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/05/09/lazyojisan01/
「働かないおじさん」の創造力と若者たちの創造力は、イノベーションというレベル感では、大して違いはないのです。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/06/01/lazyojisan05/
第3章 働かないおじさんのリスキル
企業にとっても40代、50代の社員が新たな知見を得て活性化することは喜ばしいことであり、同じ職場で働く若者の立場で考えても、しょぼくれたおじさんより元気なおじさんと一緒に働く方が、生産性向上につながることは説明するまでもないでしょう。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/05/17/lazyojisan02/
そもそも、このような根の深いに課題に対して、研修を受けさせれば解決できるなどという発想からして不自然です。すなわち、「働かないおじさん」が、その上司と部下の両者にとって非常に扱いづらい特性があり、そもそも本気でリスキルできるなどとは誰も思っておらず、何かしらのアクションを打っている体裁を整えているに過ぎないのです。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/05/19/lazyojisan03/
「働かないおじさん」を活性化させるためには、スキルをどうこうする事を考える前に、彼らのマインドセットの変革から始める必要があります。そして、彼ら自身が学びたい、もしくは、学ばなければ非常にまずいという意識を持つようになってから、リスキルに取り組まなければ、質的な変化は望むべくもないのです。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/05/19/lazyojisan03/
第2部 アート思考と働かないおじさん
第4章 働かないおじさんにとってのアート思考とデザイン思考
第5章 働かないおじさんが働く意味
第6章 自分は悪くない(心の中での言い逃れ)
第7章 見て見ぬふりの不都合な現実
上司から見た「働かないおじさん」についてですが、上司自身が若手社員の時代に、自分を指導してくれた上司や先輩であることが多いのです。そのため、見て見ぬふりを決め込み、思考停止となるか、組織への罪悪感を薄めるために、それを恩返しなのだと、自己暗示や自己弁護に徹する人もいるようです。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/05/19/lazyojisan03/
第3部 ソーシャルビジネスと働かないおじさん
第8章 働かないおじさんを取り巻く社会課題
世間では「働かないおじさんの給与がなぜ高いのか?」、「働かないおじさんにならない方法」、「働かないおじさんの扱い方」といったように、ネガティブな論調で他人事として語られることが多いと感じています。また、解決策に至っては言及されず、単に雇用環境の歴史や人事制度からこの現象の説明を試みてみたり、この問題は避けて通るしかないかのような誘導を試みるものもあるようです。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/07/04/lazyojisan09/
第9章 働かないおじさんと社会起業家
・子供が手を離れ、住宅ローンもなく、無理をして稼ぐ必要がない
・ある程度の年金が約束されているが少々不安で、追加収入があれば嬉しい
・これまで仕事一筋で社会とのつながりが全く無く、第2の人生が不安
このような「働かないおじさん」に社会課題の解決に貢献するという大義名分、これまでのビジネススキルを引き続き発揮できる場所、そしてなによりも、社会起業家として一国一城の主人となる夢を実現する機会を提供することが、私の最近の取り組みの中心です。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/07/04/lazyojisan09/
第4部 大手企業と働かないおじさん
第10章 働かないおじさんの居場所と未来
彼らは働く能力があるにもかかわらず、働く必要がないので、手を抜いている人たちです。しかし、本来は経験豊富で後進の育成をする実力があり、手を抜くことに対して罪悪感も多少あるため、環境が整えば、後進育成(善行)のサポートをしてくれることが分かっています。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/06/06/zerovr06/
私は「働かないおじさん」をソーシャルビジネスにおけるダイヤモンドの原石と見ています。すなわち、社会起業家の卵と見ています。
https://social-bizcreator.com/2020/07/04/lazyojisan09/
第11章 働かないおじさん再生工場
おじさんに共通の認識があり、「間違ったところを、他人に見せたくない。」、特に「若者には馬鹿にされたくない。」というプライドがあるのです。だから、何かを教えるにも、時代遅れと思われたくないですし、デジタルツールは間違った使い方を指摘されることが恥ずかしくて仕方がないのです。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/06/06/zerovr06/
第12章 働かないおじさんと副業
働き方改革の文脈から派生した副業容認の流れが出来つつあります。「働かないおじさん」にとってこの状況は、残業カットで収入減の現状から脱出し、副業収入を得ながら、社会貢献という大義名分を掲げて、今一度、生き生きと能力を発揮できるチャンスなのです。また、人生100年時代を豊かに生きるための視点、人脈、そしてスキルを得る機会ともなり得るのです。
https://social-bizcreator.com/blog/2020/05/17/lazyojisan02/