【アート思考を考える #1】 アート思考とは何か?デザイン思考との違いから考えてみる(1/5)

【アート思考を考える #1】 アート思考とは何か?デザイン思考との違いから考えてみる(1/5)

「アート思考を考える」のシリーズでは、当ブログの3つの軸のひとつである、人(思考)のテーマとして私が研究している「アート思考による社会課題解決へのアプローチ」について綴ります。

本来であれば、今年から某芸大の大学院で研究しようと考えていたテーマなのですが、デザインを冠した研究室を志望したこともあり、「研究計画書をもう少し研究室のテーマに近づけて再挑戦を」とのことでした。さすがに、「デザイン思考単体ではイノベーションは起こらず、アート思考による論理の飛躍が必要」という趣旨の研究計画書は、入学を志すものとしては、少々切り込みすぎたと反省しました。

しかし、大学院でも週末と放課後で研究しようと考えていたので、引き続き、一人でコツコツと研究を進めることにし、ブログで成果を共有しようと思います。

さて、ここ数年、「デザイン思考」でのアプローチがビジネス界で流行しています。ありていに言うと、顧客体験を重視するマーケティングがトレンドとなる中、デザイナーの創造性にあやかり、デザインを学ぶことなく、デザイナーの思考をまねることができるツールや手順としての「デザイン思考」が受けているわけです。

流行のデザイン思考の源流が知りたい方は、こちらに目を通すのが王道かと思います。当たり前なのですが、原題のCreative Confidenceの方が内容を正しく表しています。カバーを外すと表紙は原題となっているので、なんとなく私はカバーを外して手元に置いています。

クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法 / デイヴィッド・ケリー 【本】

価格:2,090円
(2020/5/9 14:37時点)

電子書籍はこちら。

クリエイティブ・マインドセット想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法【電子書籍】[ デイヴィッド・ケリー ]

価格:2,090円
(2020/5/9 14:33時点)

別シリーズの「ゼロから学ぶXR技術」の記事でも触れましたが、表層だけなぞっても成果など得られるはずはないのです。

ワークショップもいたるところで行われており、アイディアの発散と収束によるアイディア創発に挑戦する姿をよく見かけるようになりました。ただし、ターゲット市場における知見がない人たちが集まったところで、何事も起こらないというのが定番の結末ではないでしょうか?

そう、イノベーションの世界では「三人寄れば文殊の知恵」は通用しないのです。

https://social-bizcreator.com/blog/2020/05/05/zerovr01/

では、「デザイン思考」自体に価値がないのかというと、当然、そんなことはありません。しかるべき人が、しかるべき領域に適用することで、デザイナーのような創造的なアプローチを、ビジネス領域においても期待できるわけです。

デザイナーとはどのような職種なのかをイメージしながら、彼らの思考について考えてみましょう。イメージしやすいように、仮に、建築デザイナーを例とすると、彼らはクライアントのニーズにより建物をデザインすることが仕事です。その対象は、競技場や美術館、そして個人向けの住宅と、多岐にわたります。

建築デザイナーは建築のプロですので、設計技術はもちろん、建物の構造、素材の特性、世界のデザイントレンドについて、クライアントよりもはるかに技術と知識を有しています。加えて、クライアントの要望に合わせて、その業界について理解するための情報収集も行うでしょう。(一般的なクライアントは、すでにその業界において実績のある方に発注することが多いので、デザイナー側に何かしらの理由がなければ、通常は専門分野でポートフォリオを積み重ねることとなります。)

デザイナーは、クライアントからの要求に応えるため、あらゆる技法や素材の組み合わせを検討し、法的基準などの枠組みと予算を守りながら、斬新かつ機能美溢れるデザインを創造します。

また、クライアントのニーズに寄り添うため、いきなり完成品を提示するのではなく、スケッチ、図面、モデルやサンプルといったプロトタイピングの手法でクライアントとデザインを共有しながら、共に創造していく共創プロセスを取ります。その結果として、クライアントが満足する成果を得ることができます。

この時点で気づいた方もいると思いますが、デザイン思考を実践するには、その領域の専門家としての技術と知識を備えていることが前提となります。表面的にペルソナの設定やカスタマージャーニーマップを描けたとしても、ブレーンストーミングで創造的なアイディアは出てきませんし、それらを集約したところで何事も起こらないわけです。

さて、適切なメンバーによって行われるデザイン思考のアプローチでイノベーションは生まれるか?という問いに、皆さんならどう答えるでしょうか?

私の答えは、「YesでありNoでもある。」

本日の予定執筆分量を超えてしまったので、答えの理由とアート思考との比較については、明日にの記事でお届けします。See you then!