【働かないおじさん #2】「戦略的寄付」との二本柱でイノベーションを起こす

【働かないおじさん #2】「戦略的寄付」との二本柱でイノベーションを起こす

今回は、私が「働かないおじさん」に注目した理由について少し踏み込んでみようと思います。

執筆中の著書、「働かないおじさんとイノベーション」の序文でも触れましたが、帰国後にファンドレイザーの学びの中で、多くの非営利組織の方の頑張っている姿に勇気づけられ、私も何かできることはないかと考えるようになりました。彼らと交流する中で私が感じた非営利組織の共通点は、注力している分野についてのノウハウを持ち、もちろん情熱もあり、事業推進に最も必要なものは皆さんお持ちですが、資金と人手が圧倒的に不足していることでした。

非営利組織で家族を養うことは困難

非営利組織の人材は、学生を含め、意識の高い20代の若者と定年を迎えた社会への最後の奉仕世代で支えられています。そして、いわゆる働き盛りが殆どいないことが特徴です。なぜなら、日本には働き盛りの年代の従業員に対して、その家族を十分に養っていけるほどの給与を支給できる非営利組織が殆ど存在せず、社会貢献を志した若者の多くが、生活のため営利企業に転職していくのです。

ソーシャルビジネス・イノベーション

また、資金面では、非営利組織の運営は寄付金と助成金に頼るところが大きく、営利事業で十分な利益を上げている組織はそれほど多くはないでしょう。社会貢献事業で営利を同時に追求することは容易ではなく、当ブログで掲げる、ソーシャルビジネスでイノベーションを起こすぐらいの気概が必要でしょう。

私は、このような現状理解のもと、非営利組織による社会貢献事業においては、資金と人材の課題を解決することが、彼らに最も貢献できる手段である判断し、活動の方向感として定めました。

そして、私が所属する企業では、一般的な規模のNPOでは想像もできないほどの資金力と、働き方改革の御旗のもと、極めて好待遇で守られた人材を抱えていました。そこで、大企業に所属する私の立場だからこそできる事として、大企業が持つ資金と人材を非営利領域で活用する、全く新しい仕組みを創造することを目標に掲げ、すきま時間、夜間や週末を使い知恵を絞りました。もちろん、アート思考とデザイン思考を駆使して。

「戦略的寄付」と「働かないおじさん」の二本柱

その結果、資金面では法人寄付を再定義(再発明)し、「戦略的寄付」のビジネスモデルを創造しました。このアイディアは第3回の日経ソーシャルビジネスコンテストで高く評価され、現在も事業化に向けて活動を継続しています。そして、人材面では社会悪のように語られる「働かないおじさん」を、社会課題解決を担うダイヤモンドの原石と認識し、彼らを変革するプログラムを開発しています。

何故、ダイヤモンドの原石なのか?

大手民間企業においては、働き方改革の文脈から派生した副業容認の流れが出来つつあります。「働かないおじさん」にとってこの状況は、残業カットで収入減の現状から脱出し、副業収入を得ながら、社会貢献という大義名分を掲げて、今一度、生き生きと能力を発揮できるチャンスなのです。また、人生100年時代を豊かに生きるための視点、人脈、そしてスキルを得る機会ともなり得るのです。

更に、企業にとっても40代、50代の社員が新たな知見を得て活性化することは喜ばしいことであり、同じ職場で働く若者の立場で考えても、しょぼくれたおじさんより元気なおじさんと一緒に働く方が、生産性向上につながることは説明するまでもないでしょう。加えて、企業側が副業による本業へのシナジーを期待しているという声も聞かれます。

そして、日本の債務がすでに1000兆円を突破ている状況において、コロナの影響はより一層、国の財政を圧迫することは間違いありません。そのような状況下で、これから高齢者となってゆくこの層が、社会課題の解決と自活力の向上を両立しようという営みに、反対する理由などあるでしょうか。

個人、企業、社会の三方よし

すなわち、「働かないおじさん」を活性化し、その能力を社会課題解決に活用するアプローチは、本人にとっても、所属する企業にとっても、社会にとってもメリットのある、三方よしであり、これが「働かないおじさん」をダイヤモンドの原石と考える理由です。

今後はアート思考により、このアイディアに至ったプロセスや、2週間後に予定している、「働かないおじさん」へのワークショップの状況などを共有する予定ですので、お楽しみに。