”プロボノ”って言葉を知らないことは普通だった。最近流行りのClubhouseで普及に挑戦してみたい。

”プロボノ”って言葉を知らないことは普通だった。最近流行りのClubhouseで普及に挑戦してみたい。

今回は「プロボノ」という言葉にまつわる最近の衝撃的だった出来事についてお話しようと思います。非営利領域で活動されている方にとっては当たり前の単語である「プロボノ」ですが、ご存知ない読者のためにざっくりと説明しておきます。

プロボノとは、各専門領域のプロフェッショナルが、その専門性を生かして社会貢献を実施すること、または、その人のことを指す言葉です。一般的にボランティアとは善意があれば誰でも参加できる活動が多いですが、プロボノは通常であれば費用が発生する専門的な活動を前提としており、その役務を無償で提供するところに特徴があります。

プロフェッショナルによるボランティアと理解すると「プロボノ」という響にもなんとなくマッチしていて覚えやすいですが、語源はラテン語で「公共善のために」を意味する「pro bono publico」の略だそうです。私はチリで仕事をしていた際に生きていくためにラテン語の流れをくむスペイン語を少々学びまして、pro→por(〜のために。英語のfor)、bono→bueno(英語のgoodやイタリア語のbono)、publico→(公共の)という連想ができたのでPro bonoはすっと腹落ちしました。

衝撃1:プロボノという言葉を誰も知らない!

さて、ごくごく身近な仲間とともに、ITを専門とするプロボノをプロボノITスペシャリストと呼んで、彼らと共に非営利組織のデジタル化やサービスデザインを支援する活動を始めています。そして、さらに仲間を増やそうと声をかけると、なんと、ほとんどの人がプロボノという言葉自体を知らないのです。

それこそ、ESG経営を標榜しているような超大手企業におけるセミナーや意見交換会でプロボノについて尋ねると、自信を持って理解していると挙手できる人は5%にも満たない状況でした。これは日本人がシャイであるということを差し引いても、まだまだ一般的に通じる言葉ではないのではないかと、私自身の常識に始めて疑念を抱きました。

衝撃2:近所の本屋に広辞苑も大辞林も置いていない!

そこで、駅前のちょっと大きめの書店に立ち寄り、国語辞典ではプロボノという言葉がどのように説明されているかを確認してみたところ、なんと、全く載っていないではありませんか。何冊調べてもボランテイアは必ずありますが、プロボノがない。こうなれば昭和生まれが頼るのは広辞苑か大辞林です。しかし店内をいくら探しても見つかりません。あんなに分厚い本が目に入らないわけがないので、店員さんに聞いたところ、そうそう売れるものではないので最近は置いていないと。。。マジですか。書店に広辞苑が無い時代がやってくるとは。

冷静に考えればあんな邪魔なものより、スマホからオンライン広辞苑や大辞林を検索すれば良いわけで、当たり前の流れですが、そんなことに自力で気づけなかった発想力の乏しい自分にも衝撃を受けてしまいました。(でも会社四季報は置いてあるんだよなー、不思議だ)

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衝撃3:広辞苑にも載っていない!

このままでは気になって夜も眠れないので、電車に乗って近所では一番大きそうなブックファーストへ行き、素晴らしい辞書の品揃えにホッとしつつ、おもむろに大辞林を開くと、ありました、”プロボノ”が。念のために隣にあった広辞苑も調べてみると、なんと、見当たりません!広辞苑にも載ってないとは、やはりプロボノという言葉は全く日本に根付いておらず、知らなくても当然の言葉だったのだと確信するに至りました。

話は横道にそれますが、「船を編む」という映画化もアニメ化もされた小説をご存知でしょうか?辞書編纂にまつわる物語で、編集部の言葉に対する凄まじい情熱を感じることができる作品です。大辞林にはあって広辞苑には無い言葉って、そう多くはないと思いますが、「プロボノ」の有無という、ほんの僅かな違いが編纂する人の感度として表れ、大辞林の編集部の方が、ほんの少し社会貢献に対する感度が高かったのかなー、と興味深く作品のことを思い出しました。

さて、本題に戻りますが、この出来事は、私に15年ほど前の中国での体験を思い出させました。当時の中国はまだまだ発展途上で、一流大学を卒業したようなITエリートであっても都市部においてはルームシェアは基本で、自分が生きるのに精一杯という状況でした。そのような彼らにとって「ボランティア」という言葉は、その意味を延々と説明しないと理解してもらえない概念で、適切な中国語が存在しないと口を揃えて言っていました。

私の手元にある電子辞書の最新版でも「志願」という単語の用例に「志願活動」といった説明的なワードがあるぐらいで、辞書には登場したものの、ボランティアという外来語をうまく取り込んで文化になるところまで至っていない印象です。(中国語では外来語や固有名詞を発音と漢字の意味をかけ合わせてうまく取り込んでいるところが面白いのですが、ボランティアにはそれがみられません。)中華思想や家族第一主義的な国民性が今ひとつ浸透しない背景にあるのかもしれません。

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まずはプロボノという言葉を普及させねば

プロボノという言葉が広辞苑に載っていないというこの状況は、まさに、昔の中国におけるボランティアと同じで、その定義を説明すれば意味は理解できるが、プロボノという言葉は全く社会に浸透しておらず、もちろん文化にもなっていないことをはっきりと認識しました。

今後は、プロボノ仲間を集めるだけにとどまらず、プロボノという言葉自体を普及させ、どうすれば一人でも多くの人に興味を持ってもらえるかという観点でも活動をしていかなければいけないと決意を新たにしつつ、最近始めた大ブレイク中のアプリ、Clubhouseで[+Start a room]のボタンが気軽に押せない根性なしな自分に自己嫌悪感を覚えるのでした。

最後に日本におけるプロボノ普及の第一人者の書籍を紹介しておきますので、少しでも興味を持たれた方は是非、ご一読ください。

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