イノベーションを生み出す学びのスタンスと「差」の意識(後編)

イノベーションを生み出す学びのスタンスと「差」の意識(後編)

食事を五感で楽しむ

海外駐在していると日本食がとても恋しくなります。私はスシが大好物なのですが、海外では日本食が非常に高価なので普段はローカル飯が中心となります。

マレーシアで現地社員とランチに行くと、インドと同様にカレーを手で食べる習慣があり、指で器用にご飯とカレーを混ぜ混ぜしながら、「美味しそうー」とか言っています。

マレーシアのローカル飯「Banana Leaf」

日本の飲食業界において、「シズル感」というキーワードで集客力をアップさせる取り組みが10年以上前にブームになりました。料理の味や見た目だけでなく、焼鳥屋がわざと炭火の煙で嗅覚に訴えたり、熱々の鉄板のジュージューという音で食欲をそそったりと、まさに五感に訴えるという戦略です。

現地社員のカレーを触りながらの「美味しそー」を聞いた時、あれっ?触覚は?と、日本では忘れ去られた食事の際の触覚について考える機会を得ました。

寿司と鮨

日本食の中で、手で食べると言えば、私の中では大好きなスシだったので、一時帰国した際に、久兵衛という非常に有名なスシ屋の大将と色々話をしてみました。

大将曰く、「手の温度でネタの状態が変わってしまうので、3回で握るようにしているんです。それで丁度よいシャリの状態にするのが結構難しいんですよ。」とのことでした。

それを聞いて、あれこれ調べてみると、昨今は魚以外のネタが多くなり、「寿司」の漢字を用いることが一般的になっていますが、本来は「魚へん」に「旨い」で「鮨」でした。そういえば、「手へん」に「旨い」で「指」であることを考えると、鮨に限らず、昔の日本人も指を使うことで食事を美味しく作ったり、食べたりできることを知っていたのかもしれません。

この学びを境に、鮨を食べる際は、指先でシャリの具合やネタの感触を楽しむことを覚え、より鮨を堪能できるようになり、外国の方との会食の場でも、より深みのある話のネタで彼らをもてなすことができるようになりました。

学びのスタンス

これらの経験から、私がお薦めする「学びのスタンス」は、新たなことを書籍やネットで学ぶにせよ、非日常の環境に身を置くにせよ、趣味を極めるにせよ、単に知識を吸収するのではなく、何かとの違いを強く意識しながら学び、感じることです。そしてひとたび気になることが出てくれば、自身の専門性を発揮して(必要な専門性を身に着けて)、その気になることを徹底的に調べ上げましょう。きっとイノベーションにつながるアイディアの着想を得られるに違いありません。