世界遺産は、あらゆる国の人たちに適用できる万能コミュニケーションツールである

世界遺産は、あらゆる国の人たちに適用できる万能コミュニケーションツールである

グローバル化が急速に進み、海外出張はごくごく一般的になってきました。また、海外からの訪日客も急速に増加し、日本にいても外国籍の人と交流する機会が非常に増えたと思います。(今はコロナの影響で様子が一変しましたが。)皆さんは日本人以外の人と話すときの鉄板ネタをお持ちでしょうか?

私は、日本はもちろん、どこの国に行っても、やたらと道を聞かれるタイプです。まあ、道を聞かれるぐらいなら、良いのですが、居酒屋で隣の席の外国人と仲良くなることも結構あります。また、海外出張で仕事で初めて紹介されたお客様とのスモールトークやランチを同席した時などは、皆さんも何か話すネタが欲しいですよね。

コミュニケーションにタブーはつきもの

グローバルコミュニケーションでは、政治や宗教の話題がタブーであることをご存じの方は多いと思います。では、これは無難だという話題を皆さんはお持ちでしょうか?

日本人のように、天気のネタは無難でしょうか?

東南アジアの熱帯地域では、誰一人として天気予報に興味がありません。なんといっても常夏ですし、毎日夕方にはスコールが降り、雨季と乾季で雨の降り方が違うぐらいなので、「今日は暑いですねぇ」などと切り出しても、相手が回答に困るだけです。では、四季のある国なら通用するかといえば、私は南米のチリに駐在していたことがありますが、毎朝のニュースで天気予報が流れているのですが、その精度が恐ろしく低く、誰もそれを信用していないため、天気の話題は全く盛り上がりません。

では、スポーツネタはどうでしょうか?

国民的スポーツは避けた方が無難

30年以上前の日本におけるプロ野球のネタや、スペインでのサッカーのネタは、ハマれば強力な話題となりますが、外した時にはそのあとの関係は微妙になります。以前、スペインのマドリッドで現地企業の仲間とのランチで「レアルマドリッド」の名前をうっかり出して、かなり微妙な雰囲気になった経験があります。彼はマドリッドに住んでいるFCバルセロナの熱狂的なファンだったのです。大阪に住んでいる読売ジャイアンツのファンのようなものですね。

こういう比較的分かりやすいものであれば事前の調査で事故を避けられますが、例えば、チリでピスコサワーという現地では誰もが知る、また、自国が発祥と信じている飲み物があります。しかし、ペルーも発祥を主張しており、むしろそちらの方が信憑性が高いこともあり、チリ人相手にピスコサワーの発祥に触れるのはタブーです。しかし、初めてチリを訪れると、チリ人は必ず薦めてくるため、この事故にあってしまうのです。

隣国との関係にも注意

アルゼンチンの牛肉はもっと難易度が高いかもしれません。アルゼンチンの人は自分たちの多くがイタリア系をルーツとしていることに誇りを持っています。そしてイタリア独特と言ってしまってよいのかわかりませんが、ちょっと気取った感じが、周辺諸国の人たちの鼻につくようです。そして、サッカーが三度の飯より大切な南米では、メッシやマラドーナを輩出したアルゼンチンは心理的に一段高いところにいる感覚を持っているようにも思われます。そしてアルゼンチンの牛肉は世界最高であるとアルゼンチン以外の国の人たちも思っているのですが、悔しいので、それを口に出しては言えません。そういう人たちとのディナーでアルゼンチンのステーキを絶賛すると、これまた微妙な雰囲気になってしまいます。

このような例は、あらゆる国や地域に存在し、枚挙にいとまがありません。そして、この難しさは、相手の立場に立っても同じことが言えます。インドの方は、かなりの確率で、「子供は何人いるの?」と聞いてくる印象ですが、その切り口で日本人と話が盛り上がったところを見たことがありません。そういう意味では、こちらから共通の話題を提供できれば、相手もうれしいのではないでしょうか?

なぜ世界遺産を巡るのか

そして、これまで多くの国と地域と飛び回り、多くの人と話をしてきた中で発見した万能コミュニケーションツール、それが世界遺産なのです。

ビジネスで関わる人達の中で、自国の、特に地元の近くの世界遺産を知らない人はまずいません。そして、それを褒められて怒る人にも会ったことがありません。1度でも行ったことがあれば、その時の思い出話を添えて、また行きたいと言えばよし、行ったことがなくとも、行ってみたいといえば、あれこれと相手から話をしてくれます。また、世界遺産はウィキペディアだけでなく、リッチな情報が簡単に手に入り、十分に予習してから商談などに臨むことができます。

15年ほど前に、このような動機で回り始めた世界遺産ですが、直近の7,8年は、歴史や文化、そして自然から癒しやインスピレーションを得るチャンスと考えるようになってきました。当時はただその場に足を運ぶことが目的でしたが、最近では予習と現地ガイドの解説は外せなくなりました。まあ、常に出張の合間の弾丸一人旅なので、現地ガイドについては、別のツアー客の近くで耳をそばだてているのですが。。。