【非営利法人設立日記 #2】 なぜ営利企業のイノベーションとESGの取り組みはパッとしないのか?その2
前回の投稿では、営利企業においてエージェンシー問題に代表される、組織や評価の構造的問題により、イノベーションやESGの取り組みを推進することがいかに困難であるかについて、経営学の観点からお話しました。
今回は市場戦略の観点でイノベーションやESGの推進が困難な理由についてお話しする予定でしたが、最近、非営利法人を設立する必要性について聞かれることが多いため、先にこちらについて投稿することにしました。
いわゆる出島戦略
前回の投稿でイノベーションを推進するために、評価制度や企業文化を変えることなく、例えば「イノベーション推進室」といった組織を作ることは悪手であると述べました。すなわち、評価制度や企業文化の異なる組織を立ち上げ、そこにイノベーション推進機能を持たせる必要があるということです。もちろん、ESG推進についても同様のアプローチが適しています。
このように、特定機能や事業を切り出す経営戦略手法を出島戦略といったりすることがあります。ただ、最近は「デジマ」といえばデジタルマーケティングのことを指すことが多いので、私は会話の中では、「デジタルマーケティングではなくて、長崎の方のデジマ」と説明しています。
出島戦略にはいくつかの型があり、切り出す目的によって向き不向きがあります。今回は、組織や機能を「切り出す」という観点で一律に並べてみると、
- スピンオフ
- スピンアウト
- カーブアウト
- アウトソーシング
- カーブアウトソーシング(私の造語なので注意)
では、それぞれを簡単に説明していきましょう。
イントレプレナーは変人?
まずは、スピンオフです。大手企業にみられる社内ベンチャー制度で育成した事業を新会社として切り出すものが典型的な例です。特徴としては親会社との資本関係が強く、親会社とのシナジーを生みやすい一方、自由な提携や融資を模索することができません。目指す方向性としては、イノベーションというより、新しい市場での幅だしといったところでしょうか。
実は私も20年ほど前にスピンオフを経験しています。私の場合は社内ベンチャー制度で事業を育ててからのスピンオフではなく、今で言うところのイントレプレナーとして事業を企画し、勝手に出資者を募ってジョイントベンチャーを立ち上げるパターンでした。当時は大手企業におけるイントレプレナーは奇人変人でしたが、最近はその地位が格段に向上し、ちょっと尖ったカッコいい存在になりつつあるようです。
次に、スピンアウトです。こちらは親会社とは資本関係を持たず、完全に独立するパターンです。例としては、社内ベンチャーに対して親会社が成長性を見出せず、その一方でプロジェクトリーダにはパッションがあり事業化を目指す場合、これまでの資産を譲渡して別会社として切り離す場合です。私にとってのスピンアウトは、親会社の事業選別によって生まれることが多い、ややネガティブな印象があります。
時間の都合で今日はここまで。それほど間を開けずに、次はカーブアウトから。では。