【非営利法人設立日記 #3】 なぜ営利企業のイノベーションとESGの取り組みはパッとしないのか?その3

【非営利法人設立日記 #3】 なぜ営利企業のイノベーションとESGの取り組みはパッとしないのか?その3

前回の投稿では、事業を切り出す出島戦略について、ちょっとカテゴリの違うのも混ざっていますが、切り出すという観点で以下の5つをとりあえず並べ、スピンオフとスピンアウトについて説明しました。今回はその続きです。

  • スピンオフ
  • スピンアウト
  • カーブアウト
  • アウトソーシング
  • カーブアウトソーシング(私の造語なので注意)

伸び代のある事業はカーブアウト

3つ目は、カーブアウトです。これは大手企業が成長余地のある事業について、大企業病に引きずられずに成長させるための、非常に良い組織戦略上の打ち手といえます。

今流行りのDX(デジタルトランスフォーメーション)の切り口で例をあげれば、大手IT企業の各組織に散らばり、縦割り組織で連携できていない機能を一つに集約し、DX専業の戦略IT子会社として切り出すパターンが考えられます。

この場合の最大のポイントは、DX事業を支えることができるような社員が求める企業文化の醸成や組織設計、人事評価制度にまで踏み込むことです。そうでなければ、親会社の中にDX推進室を作ることと変わらず、イノベーションの切り口と同様にパッとしない成果しかあげられないでしょう。

具体的な例としては、富士通から切り出されたRidgelinezがわかりやすいと思います。全く異なる企業文化を目指して切り出された雰囲気がホームページをみても感じられます。通常の子会社は親会社を前面に押し出したブランディングが基本となりますが、親会社の名前どころか、会社紹介に資本関係すら明記されていません。富士通の100%出資子会社なので、実質的には親会社にコントロールされるのですが、子会社の意地と親会社の大人の対応が今後の見どころです。

また、三井物産も面白い取り組みをしています。2019年1月6日の日経新聞の記事で、社長の安永さんが「三井物産のノウハウや知見はオールドビジネス向け。新事業を生み出すには全く別の組織が必要。」と述べており、カルフォルニアにムーン・クリエイティブ・ラボを立ち上げています。こちらは独立法人として切り出されてはおらず、バーチャル組織といった感じですが、明らかに三井物産の企業文化とは異なる雰囲気が出ています。ホームページからも親会社の頭の硬い上層部が難癖を付けると噛みつかれそうな、尖った印象を受けます。しかし、同一法人であるため、好きな仕事はできるものの、恐らく、人事・評価制度についてはそれほど踏み込むことは出来ていないと想像しています。

餅は餅屋へ

少し毛色が変わって、アウトソーシングです。皆さんのアウトソーシングのイメージはどんなものでしょうか?最近では本業ではない付加価値の低い領域を外注することで、社員をより付加価値の高い事業に振り向けることができるといった感じでしょうか?

Out-Sourcingという言葉をそのまま捉えれば、外部から調達することなので、切り出すというよりは、機能を取り込むという方が正しいのですが、別組織であるという観点で一律に並べました。

アウトソーシングが一般的に認知され始めた頃は、会計や税務という共通的かつ専門的な領域について、自社で抱えるよりもプロに任せた方が安価で作業品質も高いという捉え方、すなわち、餅は餅屋というノリだったと記憶しています。

外注するわけですから、会計や税務のノウハウが自社には蓄積されませんが、それが企業の競争力低下につながるとは考えられません。しかし、アウトソーシングする機能がイノベーションやESGに関わるものならどうでしょうか?自社の成長戦略に致命的な影響があることは言うまでもありません。

時間切れ

カーブアウトは親会社の呪縛からは逃れわれませんし、重要な機能のアウトソーシングは事業成長の観点であり得ません。このような状況の中で、私が推奨しているのが「戦略的寄付」のビジネスモデルという例で提示した、カーブアウトソーシングという考え方です。

さて、それほど時間を空けずに続きを投稿すると宣言した手前、隙間時間で頑張ってみましたが、時間切れです。次回はカーブアウトソーシングについてしっかり説明したいと思います。