イノベーションを生み出す学びのスタンスと「差」の意識(前編)

イノベーションを生み出す学びのスタンスと「差」の意識(前編)

今回は、イノベーションへの着想を得るための「学びのスタンス」について触れたいと思います。

閃きの瞬間

この記事を読んでくださっている方であれば、これまでに「あー、そういうことだったのか!」と腹落ちする瞬間、心理学でいうところのアハ体験が一度ぐらいあるのではないでしょうか?また、将棋や囲碁に限らず、ビジネスにおいても、自分では全く思いつかなかったが、打たれてみればなそれしかないという一手に巡り合ったことはないでしょうか?

私はまさにこれがイノベーションにつながる着想を得た瞬間の一つだと考えています。しかし、この瞬間は突然訪れ、1分と持たず一時記憶から消え去るので、私は常にメモを取るため、枕元にはメモとペン、通勤中やお風呂でもスマホを準備し、アイディアが閃きやすいといわれる3B(Bed, Bath, Bus)に備えています。

そういえば、ひと昔前はスマホは防水ではなかったので”ジップロック”に入れてお風呂に持ち込んでいたたのが懐かしいです。

話がそれてしまいましたが、このような気づきを得た瞬間を自分なりに分析してみると、それに気づかかなった原因は、自分自身の経験や知識不足、そして視野の狭さによる思い込みであることが多かった気がします。

そこで、私が大事にしている「差」の意識と、習慣的に「差」を意識する機会を増やす学びのスタンスについてご紹介します。

「差」の意識と学びのスタンス

初回投稿の自己紹介でも触れましたが、私は10年ほど海外ビジネスを経験しました。海外駐在員が日々不便に思うことは山ほどあるのですが、私は日本の雑誌や書籍に触れる機会が殆どないことが非常に辛かったです。 最近ではAmazonで注文すれば世界中に配送してくれますし(本の価格より配送料の方が高いこともしばしばですが)、電子書籍はダウンロードしてすぐ読むことができます。

しかし、それでは情報ソースが自分の興味のある分野に偏りがちですし、Amazonのレコメンドで読みたい本に出合ったこ経験もありません。そこで私はふらっと書店に立ち寄り、雑誌や平積みの本を手あたり次第にパラパラとめくり、これまで全く関心のなかった世界への入り口とすることを習慣としていました。

そういえば、一時帰国をした際には、車を運転しながら放送大学を流し、有無も言わせず他分野の講義に耳を傾けたものでした。おっ!と思う内容があるものの、やや退屈な講義が多く、居眠り運転のリスクが高まるのが問題でした。

「差」へのアプローチ

違う世界を知ることは、自分の世界との違いを意識できる機会であり、また、自分の世界をより深く理解できる機会だと考えています。このような違い、私は「差」と呼んでいますが、その「差」にどのようにアプローチするのかを思考の起点とすることで、イノベーションにつながるアイディアの着想を得ることができると信じています。(いずれアート思考の投稿で書きますが、この着想こそが仮説推論的アプローチの「論理の飛躍」のきっかけであり、イノベーションにつながるアイディアを生むトリガーと考えています。)

例えば、IT業界では、通信技術の進歩によりに活用できるようになった「差」へのアプローチとして、グローバル化の観点では、物価差を活用したオフショア開発や、時差を活用したFollow the sun開発 (24時間開発)が知られていますし、それらの差を組み合わせて、いつでもどこでも、安価で高度なサービスをクラウド経由で受けられる時代もすぐそこまで来ているといわれています。  

製造業とソフトウェア産業との品質管理の「差」に着目し、ソフトウェア開発にQCやTQMに取り込んだことは、20数年ほど前では革新的とされました。

ついつい堅苦しくなったので、後編は日を改めて、ライト話題で続けたいと思います。