【働かないおじさん #9】コロナのおかげで分かった、働かないおじさんの見つけ方(4/4)
課題の本質について考える
全ての役割やポジションで言える事ですが、ツールで作業代替できる誰でもできそうなタスクや、部下からの報告のためだけに集合させ、課題解決のアドバイスもせず、部下の仕事を増やし、自己承認欲求を満たすだけのような会議など、単にこなして仕事をしている気分になっている風潮はないでしょうか?
お客様からの注文に対して、タスクをこなして成果物を作成することや、お客様との会議を通して売上を作ることは、どちらも価値創造と言えます。しかし、管理職のような、より高いポジションにおいては、自ら新たな価値を生み出したり、既存の価値に付加価値を追加したりと、より大きな価値創造が求められ、その対価として所得水準が高くなるわけです。それを整理したのが以下の図です。
逆に言えば、所得水準が高くなるほど、それに見合う価値を作り出すためには、タスクは減少する方向に、会議は多くなる方向にシフトするはずなのです。従って、リモートワークが始まる前後で、タスクが増えたり、会議が減ったりしている人は、価値を生み出す活動の方向性が逆であり、個別の生産性を測定せずとも、生産性が下がっている可能性が疑われるのです。
今回の検討を通して、会議には参加者それぞれに出席することに価値があるものと殆ど無いものがあり、それが意識されずに惰性で召集されているという事実に意識を向けることができました。リモート会議の生産性を議論する以前に、そもそも召集や参加の意味を問い直すことが、根本的な課題の解決につながると考えられます。
また、価値創造のためのタスクは一般的に難易度が高い知的創造活動を伴うため、普段からの知識の習得が重要となります。しかし、「リモートワークで通勤時間がなくなり、睡眠時間や家族と過ごす時間が増えました。」という巷のインタビューは聞き飽きましたが、「リモートワークで通勤時間がなくなったせいで、電車内での読書や語学に集中して取り組む時間がなくなりました。」という話は殆ど聞きません。このような、社会人になってからの学びに対する消極性が、日本の生産性(特に管理職)が先進国の中でも低い水準にあることと無関係では無いような気がします。
タスクと会議の切り口で、価値創造と期待される所得水準との関係性について考えてみましたが如何でしたか?新型コロナによる強制リモートワークが始まる前後の状態を自己分析してみると、自分自身の働き方と真摯に向き合う機会を得ることができるかもしれませんよ。
働かないおじさんの見つけ方
当ブログの読者の方はご存知のとおり、私は「働かないおじさん」をソーシャルビジネスにおけるダイヤモンドの原石と見ています。すなわち、社会起業家の卵と見ています。以下に、いくつかその理由を上げておきます。
- 子供が手を離れ、住宅ローンもなく、無理をして稼ぐ必要がない
- ある程度の年金が約束されているが少々不安で、追加収入があれば嬉しい
- これまで仕事一筋で社会とのつながりが全く無く、第2の人生が不安
このような「働かないおじさん」に社会課題の解決に貢献するという大義名分、これまでのビジネススキルを引き続き発揮できる場所、そしてなによりも、社会起業家として一国一城の主人となる夢を実現する機会を提供することが、私の最近の取り組みの中心です。
したがって、おじさん達を研究対象として日々観察しているのですが、今回のタスクと会議の変化の観察を通して、「働かないおじさん」である可能性が高い人の見つけ方に気がつきました。
新型コロナの影響でリモートワークが始まる前後のタスクと会議の変化の傾向について、年齢の観点、すなわちおじさんをターゲットにして見てみると、次の4つのパターンがありそうでした。
- ダミー型:働けるが、働かないおじさん
- 【Before】本人以外の参加者が登録されていないAirな会議や「ワーク」や「作業」といったタスクを処理する時間としてスケジュールを確保し、忙しさを演出している
- 【After】ほとんど変化が見られない。
- 天然型:働けるが、働かないおじさん or 働けないおじさん
- 【Before】タスクも会議も少なく、半日単位で予定が空いている。
- 【After】ほとんど変化が見られない。
- 八方美人型:働けるが、働き方を間違っているおじさん
- 【Before】様々なチームからとりあえず参加要請されるが、出席しなくても特に問題がないため、「仮の予定」がダブル、トリプルでブッキングされている。タスクも多く、会議中に内職することが多い。
- 【After】効率的な会議運用の流れで、会議総数は減るものの、「仮の予定」のダブルブッキングは常態化。オンラインによる複数の会議参加と内職を継続。
- 非価値創造型:働けるが、働いていないことに気が付かないおじさん
- 【Before】決裁権者や意見照会先として召集されるか、報告させるために気軽に主催する会議がで埋め尽くされる。管理職に多い。
- 【After】自分自身が報告を求められる会議と、そのために必要な報告させるための会議が残る。効率的な会議運用の流れで、召集される会議が減少するとともに、リモートでは自ら気軽に呼び付けることが面倒なことも相まって、会議が激減し、本来の価値創造の業務に集中できるようになる。
ダミー型については、仕事をしてるフリをしている可能性が高く、意識変革さえできれば即戦力となる可能性が高いと思われます。天然型については2通りあり、そもそも働けないおじさんがいるのですが、そうでない場合、家庭の事情や何かしらのポリシーで仕事をコントロールしており、非常に能力の高い「働かないおじさん」の可能性があります。八方美人については、自己研鑽を怠らず、知識を備えた人である場合、劇的に業務負荷が下がるなどの環境変化で生まれ変わる可能性がありますが、基本的には社畜人生が長く、容易にはライフスタイルを変えることができないでしょう。非価値創造型の場合は、その事実を受け入れ、意識変革ができる柔軟性があれば、管理職に抜擢されるほどの素養があるので、リスキルできれば社会起業家に最も近い存在だと思われます。
おわりに
4回に渡ってお届けしたシリーズでしたが、如何だったでしょうか?世間では「働かないおじさんの給与がなぜ高いのか?」、「働かないおじさんにならない方法」、「働かないおじさんの扱い方」といったように、ネガティブな論調で他人事として語られることが多いと感じています。また、解決策は言及されず、単に雇用環境の歴史や人事制度からこの現象の説明を試みてみたり、この問題は避けて通るしかないかのような誘導を試みたりするものもあるようです。
私は、後進育成の結果として、アサインできるポジションを確保するため、少なくとも管理職には適切な評価制度の下で、降格人事や大幅な減給を実行できる仕組みを作ることが重要だと考えています。明らかにパフォーマンスを出すことができない管理職の下で、どうやって若者が将来のキャリアを描くことができるでしょうか?これは若者の離職という課題とも直結しています。
しかし、制度や仕組みを変えることができるマネジメント層が、すでに「働かないおじさん」化している場合には、自らの首を締めることになるため、全く機能しないアプローチです。そこで、私は企業課題の解決と社会課題の解決を両立する「戦略的寄付」を財源として、「働かないおじさん」を社会起業家として独立させることを提案しています。そうすることで、役職定年を待たずにポジションを空け、願わくば、後進の若い世代と協業してもらい、おじさん達が社会課題の解決に向かって生き生きと活躍する背中を、彼らに見せて欲しいと思っています。そして、それは若い世代が未来に対して漠然と抱く不安を解消することにもつながるのではないでしょうか?