【アート思考を考える #6】イノベーションの羅針盤。クエン酸回路からフラクタルに考える

【アート思考を考える #6】イノベーションの羅針盤。クエン酸回路からフラクタルに考える

本ブログでは、まあ、ブログというぐらいですから、その時々の気分で書きたい物を書いています。しかし、アート思考、デジタル技術、旅の回想録や働かないおじさんへの期待など、一見するとそれらには何の関係性もないと感じる読者もいるかと思います。

もちろん、トップページの「このサイトについて」に掲げている通り、メッセージに濃淡はあるにせよ、私としては一定の方向感をもって記事を執筆しています。そして、読者の皆さんに何かしらの気づきが得られるのなら、細かいことはどうでもよいという向きもあるのですが、できれば読者が「木を見て森を見ず」の状態にならないように、本ブログの方向感も共有できればと考えました。

私にとっての北極星

そこで今回は、私が試行錯誤しながら作ろうとしている、社会起業家育成プログラム(「働かないおじさん」変革プログラムはそのサブセット)が必ず機能すると認識したきっかけであり、私の中の普遍的事象であるKCC(Krebs Cycle of Creativity)について簡単に紹介しようと思います。

ひと昔前と比べると、インターネットの普及のおかげで、書籍や論文、そして研究者のブログなど、世界中の知的好奇心を刺激するコンテンツに非常に容易に触れることができる時代になりました。特に論文には、我々ビジネスパーソンにとっては奇想天外な切り口の研究や、お金の匂いがしなさ過ぎて、こんな研究でご飯が食べていけるなんて羨ましいといった、色々な意味で感情を揺さぶられるものが多く、一種のエンターテインメント性すら感じます。

そういった情報源の一つとして、The Journal of Design and Science (JoDS)があります。そして、今回紹介するKCCはここで2016年にMITのNeri Oxmanによって提唱されました。

The Journal of Design and Science (JoDS), a joint venture of the MIT Media Lab and the MIT Press, forges new connections between science and design, breaking down the barriers between traditional academic disciplines in the process. Targeting readers with open, curious minds, JoDS explores timely, controversial topics in science, design, and society with a particular focus on the nuanced interactions among them.

https://jods.mitpress.mit.edu/about

論理の飛躍がすごい。クエン酸回路ときたか。

高校での生物の授業でクエン酸回路について学んだ覚えのある人もいるかと思います。クエン酸回路は、生物全般に見られる代謝に関する生化学反応回路で、効率の良いエネルギー生産を可能とするとされ、その発見者であるHans Adolf Krebsは1953年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。そして、Neri Oxmanはこのクエン酸回路から着想を得て、創造的エネルギーの社会における効率的な循環についてモデル化しました。

Krebs Cycle of Creativity (Source: Age of Entanglement by Neri Oxman, Published on Jan 13, 2016)

KCCをどのように捉えるか

このモデルの特徴は、4つの象限からなる2つのモデルを統合、すなわち、【Art, Science, Engineering, Design】と【Perception, Culture, Nature, Production】の組み合わせにより、8つの領域を定義しています。そして、それら8つ領域の接続性について言及しているところが秀逸であり、まさに、価値創造の難易度が高い領域、すなわちイノベーションが必要な領域を知ることができます。

また、PhilosophyとEconomyで構成される円の内側について、私はこれを社会ととらえています。更に、これまで営利追及が中心であった経済優先の社会ではなく、人間の精神活動と経済活動のバランスがとれた持続可能な社会ととらえることで、このモデルは、価値創造により持続可能な社会の実現を志す者の羅針盤となりうると考えています。

そして、その羅針盤は少なくとも以下の3つの方向性について検討する際に、有効な指針となるでしょう。

  • 超域人材のキャリアモデル
    • ※超域人材とは、Art, Science, Engineering, Designのいずれかの領域で専門性を持ちながら、全領域に対する知見を有し、それらを融合させることで価値を創造する人材と定義しました。いうまでもなく、私自身が志向するキャリアモデルです。
  • イノベーティブな新規事業創造
  • イノベーティブな組織開発

KCCを活用したこれら3つの方向性の検討についての話題は、別の記事をお待ちください。

如何でしたか?本ブログがイノベーションへの着想を得るために、知識や経験、アート思考やデザイン思考といった思考法、デジタル技術、そして社会貢献の観点からアプローチしている理由が、なんとなく理解してもらえたのではないでしょうか?